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貧血について

パフォーマンスを左右するヘモグロビン値

鉄はヘモグロビン、ミオグロビン、各種酵素を構成するため、鉄不足の状態は、貧血の有無に関係なく、運動機能や認知機能などの低下を引き起こす。
アスリートにとつて鉄不足はパフォーマンスに直結する。貧血は通常、ヘモグロビン値(男性13g/dl
以下、女性12g/dl以下)によって診断される。
しかしヘモグロビンは1mg/dlにつき酸素摂取量3ml/体重kg/分であることから、通常よりもヘモグロビン値が低くなれば、酸素の供給量が低下してしまうため、アスリートの場合は貧血の診断基準を上回っている場合でも、そのアスリートの通常のヘモグロビン値よりも下回っていれば、パフォーマンス(特に持久力)が下がったり、疲労しやすくなったりする。
コンディションが良好なときのヘモグロビン値を知っておくことは重要だ。
正常な状態から貧血へと進むプロセスは、「正常」「前潜在性鉄欠乏状態」「潜在性鉄欠乏状態」「鉄欠乏性貧血」の順となる。
最初に鉄を貯蔵しているフェリチンが低下していき(前潜在性鉄欠乏状態)、次に血液中にある鉄の血清鉄が低下し(潜在性鉄欠乏状態)、最後にヘモグロビンが低下し、鉄欠乏性貧血となる。
貧血のリスクが高い競技種目のアスリートは、貧血予防のために定期的に血液検査を受けているが、ヘモグロビンだけではなく、血清鉄やフェリチンの値にも注目すると、今後、通常よりもヘモグロビンが低下した状態になってしまうのか、貧血の状態に陥る可能性があるのかなどを把器でき、予防の方法を選択することができる。

必要量を摂取できなかったために起こる貧血

鉄の吸収は腸だけではなく、胃でも行われているため、胃腸の調子が悪い場合には、鉄が欠乏しやすい。
また、痔やけがなどで出血がある場合も貧血の原因となる。
さらにアスリートは、激しい身体活動によって、溶血(赤血球が壊れてしまう)が起こったり、消化管から出血したり、発汗量が増えたりすることで鉄をはじめとするミネラルの損失が多くなる。

赤血球やヘモグロビンが欠乏状態となっても造血によって補うことができれば、貸血にはならないが、損失に比べて造血が下回ると鉄欠乏性貧血を起こすことになる。
造血するためには、十分な鉄の摂取が必要であるが、アスリートは運動によって消化吸収を効率よく行う時間が少なくなることから、食事として摂取している量が十分であっても吸収された鉄の量が必要量以下になることがある。そこで、吸収率を高める工夫をするとともに、摂取量を食事摂取基準で定められている量よりも多めに設定することが推奨されているが、明確な基準となるデータが乏しいのが現状である。
鉄欠乏性血になると回復に3~6カ月間かかるといわれている。医師の診断によって血の状態を把握し、食事の改善や工夫をし、鉄の摂取量を多くする、胃腸の状態を良好にする、運動量や時間を少なくして強度も低くするなど、原因となることを解消・軽減させる必要がある。鉄の摂取が食事からだけでは足りない場合には、鉄剤やサプリメントを使って補うことになるが、貧血の状態が重症化したり、長期間に及んだりした場合には、医師が静脈注射によって鉄を補うこともある。