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シニアアスリートについて

変化

加齢に伴う身体の変化を受け入れ、対応するシニアアスリートの栄養管理を考えるポイントは2つある。
1つは加齢に伴う変化に対応すること、2つ目は”衰え”だけではなく、疾病の予防・治療(改善)へのとり組みだ。

加齢とともに身体は変化する。
加齢による変化は、骨格筋量の減少だけではなく、ありとあらゆる組織や器官などに起こる。
運動をしているアスリートであっても、その変化を受け入れなくてはならない。
加齢とともにさまざまな競技種目の記録が落ちていくのと同じように、身体も全体的に機能低下していくのだ。

機能低下

栄養・食の観点では、加齢により、消化器系の機能が低下する。
具体的には
口の中:歯の状態が悪いと咀嚼機能(かみ砕く能力)が低下する。
唾液の分泌も少なくなり、唾液による糖質の消化も低下する。
また、食べたものと唾液の混ざり具合が悪く、スムーズに飲み込める柔らかさにできなくなる。さらに、飲み込むタイミングが合わなくなり(嚥下機能の低下)、むせることが多くなる。

胃腸:消化管の運動機能と消化液の分泌機能の低下により、消化能力が落ちる。また、消化がうまくいかなければ吸収率も落ちる。

大腸:運動機能が低下することで、下痢や便秘を引き起こしやすくなる。

上記に加えて、吸収されたあと体内でのさまざまな代謝機能も落ちる。

一般的に、高齢期に入ると、身体が小さくなり、身体活動量が少なくなることから、食べる量が少なくなったり、少なくしなくてはいけないと考えたりする。しかし実際には高齢者であっても、そんなに少なくなっていないことがある。
これは消化吸収の能力が落ちる分、食べて補っていると考えられる。
若いときの吸収率を100%とするご加で消化が悪くなり吸収率が80%に落ちた場合に、エネルギーや栄養素を使う価も若いときの80%であれば今まで通り食べればよいということになる。
もしも使う量が70%であったら、若いときよりも食べる量が少なくなることになる。


消化吸収の能力が低下するために、食事からでは必要量の摂取が難しい場合には、サプリメントなどを利用して補うこともできる。
ただし、過剰摂取は避け、適正量の摂取にとどめなければならない。
サプリメントではなく、健康食品のようなものを食べている場合には、栄養素レベルで考えたときに、過剰摂取となる可能性があることを知ってほしい。また、サプリメントや健康食品をとる場合には、自分自身の身体で考えて、その必要性と量を決めてほしい。

栄養の必要量

体格が小さくなることによって、エネルギーや栄養素の必要量はどう変わるのか。
同じ動きであっても体重が軽い方がエネルギーはかからないことから糖質や脂質の摂取量は少なくなり、タンパク質も体重当たりで考えるので少なくなる。
ビタミンとミネラルも代謝が下がれば使う量も少なくなる。
ということで、全体的に必要量が少なくなるのだ。
「サルコペニア」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。
サルコペニアは、加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下として定義されている。
サルコペニアになると筋肉量が減少し、骨粗しょう症のリスクが増すことから介護が必要になる可能性が高くなる。
原因は、身体活動量、ホルモン分泌、エネルギーやタンパク質摂取量の減少などによるタンパク質合成の低下と、炎症反応の増加によるタンパク質分解の促進と言われている。
予防するには、運動面では有酸素性運動でインスリン抵抗性を改善し、レジスタンス運動で筋量を維持・増加すること、栄養面ではエネルギー不足にならないようにすることと十分にタンパク質を摂取することがあげられる。運動面と栄養面を両輪で考えなくてはならない。
アスリートは、運動面の問題はないかもしれないが、運動に見合った栄養摂取ができていなかったり、エネルギー不足のまま体重を維持していたりすると、サルコペニアの可能性が出てくるので、注意が必要だ。
栄養管理は、体格、身体活動量、消化吸収の状態を総合的に評価して、進めていく。
加齢に伴う身体の変化は個人差が大きく、それぞれの状況に合わせた栄養管理が必要だ。


栄養面からは、食生活を見直すことによって、疾病の予防効果を高めたり、改善したりするが、この見直しを図る際には、正しい情報を参考にして計画を立ててほしい。
食生活を極端に変更させれば、よいことも起こるのかもしれないが、そのしわ寄せとして悪いことも起こる可能性が高くなる。
例えば、野菜は身体にいいと聞いたので、食事の2/3を野菜にすると、副菜は十分食べることができるが、その他の主食や主菜が少なくなり、エネルギー不足と低栄養状態となる。
また、食物繊維の過剰摂取となり消化が落ち、吸収率が低下し、ますます低栄養状態を引き起こすかもしれない。
情報の精査をしてその活用の方法を間違えず、個人の状態に合わせて疾病を予防する、あるいは、疾病とうまく付き合ってほしい。自分の身体と会話をして、質の高いセルフマネジメントを実行し、「生涯現役!」を続けていこう。