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前腕コンパートメント症候群

概説

前腕部は屈筋群、伸筋群,橈側伸筋群の三つの区画(コンパートメント)に分かれている。

区画内の内圧が上昇して血行障害や神経障害をきたし,筋の機能不全を起こし、場合によっては壊死にいたるものもある.これをコンパートメント症候群という.前腕での発生は,ほとんどが屈筋群コンパートメントである.

発生機序

1. 急性型

骨折,打撲,圧挫など外傷による筋内出血、浮腫により発生する、急性型では内圧が上昇し、毛細血管透過性の亢進が起こり、さらに内上が上昇すると細動脈の閉塞と組織間液が増量し、さらに内圧を上昇させるる悪循環に陥り、筋や神経を不可逆的な変化に移行させる。

2.慢性型

ウエイトトレーニング、オートバイレース、車椅子レース、剣道などの運動を続けることで発生する.慢性型は、運動による筋容量の増大に対応して区画が拡大できない結果発生するもので、原因として筋膜の肥厚が考えられる。また。長期間のトレーニングにより筋肥大が区画内の余地をすでに少なくしてしまっている可能性もある.

その他

きつい包帯やギプスなどによる圧迫で発生するものなどがある.

■症状

1.急性型

症状が急速に進行する。
初期症状は、障害されたコンパートメントに一致した圧痛、自発痛、腫脹である。特徴は障害されたコンパートメントの筋を他動的に伸長させると疼痛が増強することである。
進行するとコンパートメントは硬く腫脹し,手指は屈曲位をとるようになり、感覚障害や運動麻連がみられる.水疱を形成するものもある.
届筋群コンパートメントの場合は指の他動伸展で疼痛が増強し,正中・尺骨神経領域の感覚障害を伴う。
伸筋群コンパートメントの場合は指の他動屈曲で疼痛が増強するが、感覚障害を伴うことは少ない。橈骨動脈の拍動は必ず消失するわけではない。最終的に フォルクマン拘縮と同様,鷲手変形,手関節屈曲拘縮、前腕回内拘縮をきたし、これらは不可逆的である。

2.慢性型

可逆性で、運動中に疼痛を生じるものであり,安静時には症状がない.

■治療法

1.急性型
急速に進行するので,高挙および冷却し。内圧の上昇を極力防ぎ、至急医療機関に搬送しなければならない。包帯、ギプス装着時であれば、すみやかに除去する.

2. 慢性型

冷却して,安静を保持し、スポーツ活動を休止して、経過を観察する、再発するようであれば、医師に対診を依頼する。

●急性外傷に実施する RICE処置のうち圧迫と挙上は筋への血流減少を助長させる可能性があるため注意を要する。